<原因> |
一般的には皮膚から出っ張ったできものをイボといいますが、皮膚科ではヒト乳頭腫ウイルス(HPV: Human Papilloma virus)が感染した腫瘤のことを疣贅(イボ)と定義します。ただし、HPVは150種類以上あります。その為、臨床的には様々な形態をとります。 |
<臨床> |
できる部位や感染したウイルスに型によって様々な臨床をとります。 |
<診断> |
視診で診断しますが、ダーモスコピー検査を行うと、一層正確に診断できます。 |
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足底疣贅。HPV1型感染による場合が多く、ミルメシア(蟻塚)と呼ばれることもあります。 |
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尋常性疣贅(HPV2/27/57)。全身どこにでも発生しますが、手指に発生するタイプが多く、HPV2型感染による場合が多いとされています。 |
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扁平疣贅:HPV3/10/28感染による平坦な疣贅で、多くは顔面や手背に発生します。 |
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尖圭コンジローマ:HPV6/11感染による。通常、粘膜(陰部)に発生します。性病の一種と考えられます。 |
<鑑別疾患> |
@水いぼ、伝染性軟属腫 |
伝染性軟属腫ウイルスといわれるHPVとは異なるウイルス感染症です。小児によく発生しますが、HPV感染とは異なり、自然消退する可能性が高い感染症です。 |
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ASkin tag |
皮膚の老化によって生じる腫瘤です。ウイルス感染症ではないために、ヨクイニン内服の効果はありません。一部に、製薬メーカーがSkin tagにヨクイニンが効果的としてコマーシャルを行ったことがありますが、誇大広告であり、メーカーも効果がないことを知った上での広告であったために、不適切として日本臨床皮膚科医会が抗議して広告を取りやめています。 |
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B脂漏性角化症 |
別名、老人性疣贅ですが、これは皮膚の老化であり、ウイルス感染症ではありません。 |
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C日光角化症 |
紫外線による皮膚の老化の結果起こったがん化。前がん状態の腫瘤です。 |
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D脂腺増殖症(Sebaceous hyperplasia) |
毛嚢に付属する皮脂腺が増殖した状態です。基本的には加齢によりますが、脂性肌の人(男性に起こりやすい)が発症しやすいとされます。 |
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E汗管腫(Syringoma) |
汗腺(エクリン汗腺)が増殖した小腫瘤で、女性に多く、多発するのが特徴です。 |
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Dエクリン汗孔腫 |
エクリン腺といわれる汗の腺より発生した良性腫瘍。足底に好発するため、しばしば足底疣贅と誤診されて冷凍凝固などを受けていることがあります。ダーモスコピー検査にて典型的な血管増生を認めます。 |
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<治療> |
@液体窒素による冷凍凝固法:−200℃の液体窒素をガス状にしてイボに吹き付けます。 イボの大きさにもよりますが、1〜2週間おきに2〜3回冷凍凝固するとイボが脱落します。 ただし、足底や手指、爪周囲の尋常性疣贅な治りにくく、10回以上の治療を必要とする場合があります。 A電気焼灼:電波メスにてイボ自体を電気焼灼します。強い痛みを伴いますので局所麻酔が必要になります。 B外用療法:尖圭コンジローマについては、ベセルナクリーム(イミキモド)の外用が保険適応になっていますが、他のウイルス性疣贅には効果はありません。ステリハイド(グルタールアルデヒド)20%外用を行うこともありますが、保険適応外です。 C当院では、小児などの疣贅治療にはモノクロール酢酸の密封療法を行います。液体窒素と比較すると効果は弱いですが、痛みがありません。 Dヨクイニン内服:尋常性疣贅や伝染性軟属腫(水いぼ)に対しては免疫活性作用があり、効果的です。ただし、スキンタッグに関しては、一部マスコミがコマーシャルしているようなハトムギ(ヨクイニン)は効果はありません。ヨクイニンが効果的なのはウイルス性疣贅です。頸部にできた扁平疣贅などへの効果をスキンタッグまで効くような誇大広告がみられるため、日本臨床皮膚科医学会はハトムギメーカーに抗議しています。 |
<予防> |
疣贅はウイルス感染ですので、触ることで他の部位に感染(うつる)ことがあります。また、イボコロリ(サリチル酸)を足底疣贅などに使うことで拡大、他部位へ感染させることがあります。 |