医療法人 社団 税田会



紫外線の話
                               水前寺皮フ科医院 井上雄二

紫外線
紫外線とは可視光線と電離線(放射線)の間の電磁波であり、その波長は100〜400nmである。
波長の短い方から
       真空紫外線	(100~190nm):大気圏内には届かない
	UVC		(190~290nm):大気圏内には存在するが地表には届かない
	UVB		(290~320nm):日焼けを起こす紫外線
	UVA		(320~400nm):日焼けを起こさない紫外線
の4つに分けられます。これは、紫外線を波長によって分けたのではなく、その性格によっ
て定義したものです。宇宙空間には存在するが大気圏には届かない真空紫外線。大気圏内に
は届くが地表には届かないUVC。地表に届き日焼けを起こすUVB。地表に届き日焼けを起こさ
ないUVAである。


                                  佐藤吉昭編 光線過敏症より

電磁波は、その波長によって皮膚への浸透度が違います。紫外線の場合には波長が長くなる
程、皮膚への浸透度が強くなります。UVBは真皮上層までしか到達できませんが、UVAは真皮
深層まで到達することができます。

紫外線の功罪
功:紫外線(日光)に照ることで人体にいいことは何もありません。唯一の功は、皮膚に紫
外線が照たることで、ビタミンDが生成されることです。ビタミンDが不足すると「くる病」
になります。以前の日本には「くる病」患者が多くいましたが、これは栄養状態が悪かった
時代のことであり、最近は食事で十分量のビタミンDを摂取できるので、日光浴でビタミンD
を作る必要はありません。

罪:紫外線はヒトの皮膚に対して色々な障害を起こします。
1.シミを作る
2.しわを作る
3.皮膚がんを作る
4.皮膚の局所免疫を低下させる
 などの障害を引き起こします。

1.シミ
紫外線の影響で皮膚にはいろいろな変化が起こりますが、最も代表的な変化が色素沈着です。
老人性色素斑、肝斑、老人性疣贅などは若い頃に紫外線を多く浴びた影響が大きいことが分
かっています。
  
2.しわ
しわ(皺)とは、「皮膚がたるんで出来る表面の細かい筋目」のことであり、真皮における
弾性線維の変性と膠原線維の減少が最も大きな要因です。皮膚の構造はゴムに例えられるこ
とがあります。天然ゴムでできた輪ゴムを日の照る場所に置いておくと数日間で切れてしま
います。これは、紫外線の影響でSS結合が切断してしまうために起こります。皮膚でも同じ
ように紫外線に長期間照ってしまうと真皮における膠原線維と膠原線維を繋ぐ弾性繊維が変
性してしまい、弾力がなくなっていきます。これが皺です。つまり、皺の最も大きな要因は
紫外線照射、特に真皮まで届くUVAの照射によって起こっていると考えられます。
3.皮膚がん
長期間の紫外線照射によって皮膚はがん化していきます。日光角化症⇒有棘細胞癌、基底細
胞癌、メラノーマなどの皮膚がんは紫外線の影響をうけているとされます(皮膚がんの項目
参照)。
 
 
4.免疫低下
紫外線照射によって皮膚の局所免疫力が低下することが知られています。特に、ウイルスに
対する抵抗力の主体である細胞性免疫が低下します。戸外活動を行った後に、口唇ヘルペス
が再発する現象はよく知られています。
 

日焼け
紫外線に暴露されるとヒトの皮膚は炎症を起こし、紅くなります(Sun Burn)。その後、メ
ラニン色素の増加によって皮膚の色は黒くなっていきます(Sun Tan)。Sun Burnは主にUVB
によって起こりますが、Sun TanはUVB, UVA共に起こします。
 
 
厚生労働省紫外線健康マニュアル2008より

日焼けの起こしやすさは人によって様々です。同じ量の紫外線を浴びても、日焼けしやすい
ヒトと日焼けしにくいヒトがいます。ヒトの皮膚の色に対する定義はいくつかありますが、
最も有名なのがFitzpatrick(フィッツパトリック)の分類です。日焼けのしやすさから6つ
の群に分けています。日本人は、Fitzpatrick分類では大部分がタイプIIIで、色白と言われ
るヒトがタイプII、色黒と言われるヒトがタイプIVです。
 


また、紫外線に対する感受性(紫外線に強いか、弱いか)を具体的に数値化したものとして
最小紅斑量と最小光毒量があります。
MED(Minimal Erythema Dose):UVBに対する感受性
MPD(Minimal phototoxic Dose):UVAに対する感受性
  

遮光
紫外線が強い南半球、特にオーストラリアでは遮光に対する意識が高く、遮光についての生
活指導は国家プロジェクトになっています。
  
 
 
日焼け止め(サンスクリーン剤)
サンスクリーン剤を選ぶ指標として、SPFとPAがあります。
SPFはSun protection factorの略で、主にUVBを防ぐ指標として使われます。以前は、SPF100
などのサンスクリーン剤も発売されていましたが、現在、日本で販売されているサンスクリ
ーン剤のSPFは最大50+で、それ以上の値は表記しないことになっています。これは、塗るこ
とでMEDの値を○○倍にしてくれるという指標です。つまり、何も塗らない状態では5分間で
日焼けするところをSPF50のサンスクリーン剤を塗ると、5×50=250分に伸ばします。しかし
ながら、250分、4時間も経つとサンスクリーン剤は、ほとんどが汗で落ちてしまうので、
SPF50でもSPF100でも効果には差がないということになります。そこで、2000年1月1日より
日本化粧品工業連合会において、SPFの上限を50+と設定しました。
PAはProtection grade of UVAの略で、UVAに対する防御力を+〜++++の4段階で設定していま
す。UVAはSun burn反応を起こさないため数値化することは困難だと考えられます。それでは、
PA値が高ければ良いのかというと一概にそうとも言えません。PA値を上げるためには、紫外
線吸収剤(化学的サンスクリーン剤)を使う必要があります。一般的には、紫外線吸収剤は
紫外線散乱剤(物理的サンスクリーン剤)と比べて「かぶれ」などの皮膚障害を起こす危険
性が高いと考えられます。サンスクリーン剤の選び方としては、化学的サンスクリーン剤を
含まない、かぶれを起こしにくい物を選ぶことです。SPFやPAの高いのも選ぶよりも、塗る
回数を増やす方が遮光にはより効果的です。

紫外線吸収剤
 
		
  
 


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