医療法人 社団 税田会



熱傷
                      水前寺皮フ科医院 井上雄二

やけど(熱傷)は熱湯、火焔、蒸気などの熱による皮膚損傷のことであり、その
損傷の程度は触れた物の温度と接触時間によって決まります。70℃の場合では1秒
触れただけでも熱傷になります。

1.分類
(ア)原因物質による分類
@通常熱傷:火焔、蒸気などによる熱傷

A化学熱傷:強酸、強アルカリなどの化学薬品に接触することで起こった熱傷。
 一般的には強アルカリによる熱傷の方が重症になりやすい。フッ化水素による
 熱傷には特に注意が必要です。

B電気熱傷:電流による組織損傷であり、皮膚表面だけでなく、筋肉や内臓にも
 損傷がおよぶことがある。雷撃傷など。

C放射線熱傷:高線量の放射線暴露によっておこる。日焼けも紫外線による熱傷
 である。

D低温熱傷:42℃を超えると組織損傷が発生する。45℃程度の温度に長時間接触
 することで熱傷を引き起こす。ほかの熱傷と異なり、長時間かかえて組織障害
 が進むので、深くなりやすい特徴です。

(イ)組織損傷の程度による分類:傷は組織損傷の深さによりI度〜III度に分類さ
  れます。ただし、やけどした直後はその深さの判断ができないことがありま
  す。特にSDBとDDBの区別には受傷後1〜2週間を要します。そこで、受傷面を
  針で刺して痛さを感じるかどうかを判断したり(Pin prick test)、毛を抜
  いて(抜毛法)みたりしてやけどの深さを判断したりします。



熱傷面積
ヒトの体表面積は、1.5〜2.0cm2程度ですが、部位別の面積としては、9の法則
が汎用されます。これは、頭:9%、上肢:9%、下肢:18%と9%を一つの
単位として病変の部位面積を概算する方法です。

 
2.重症度:熱傷の重症度として、Burn Indexが汎用されています。そのIndexを
もとに熱傷の重症度を判定し、外来治療、入院治療、ICU管理の適応などが判断さ
れます。それらの判断の一助としてArtzの基準があります。つまり、クリニックな
どで治療が可能な熱傷はこのArtz基準の軽症の範囲になります。この基準に従うと
下肢全体にII度熱傷を負った場合には入院の適応となります。


 
3.	治療
(ア)Cooling:面積にもよりますが、小範囲のやけどの場合にはまず流水で15分〜
  30分は冷却してください。水疱を作っても水疱は破らずにタオルなどで保護し、
  その上から保冷剤などで冷やしながら病院を受診します。水疱は生体膜(保護膜)
  として有用ですので、仮に破れたとしてもそのままにして受診してください。
(イ)局所療法(外用療法):やけどの治療の基本は外用療法ですが、深さや受傷時
  期によって外用剤を変更する必要があります。間違った外用剤を使うことで治
  るまでの期間が長引いたり、感染症を引き起こすことがありますので注意して
  ください。
(ウ)手術:II度熱傷のDDB以上では手術が必要になりますが、顔面や手・足以外では
  基本的には受傷後2週間目が手術時期です。最初の2週間は外用療法が主体にな
  ります。
(エ)後療法:熱傷は皮膚が再生しても当初は赤みが残ったり、痒みが残ったりします。
  また、赤み→炎症後の色素沈着を残して治癒します。さらに、DDB以上の熱傷では
  皮膚が引きつる、いわゆる熱傷瘢痕を残します。色素沈着や瘢痕をできるだけ少
  なくするためには後療法が重要です。
@皮膚が再生したころには痒みが残りますので、痒み予防で抗アレルギー剤の内服や
 保湿剤の外用を行います。
A色素沈着の予防にはビタミンCの内服が効果的なこともあります。
B瘢痕予防には保湿と圧迫が有効です。特に狭い範囲の場合には術後の圧迫療法が傷
の盛り上がり防止には有効な方法です。圧迫するための装具としてシリコンプレート
(シカケア)を勧めています。


C瘢痕予防のための内服薬としては唯一、トラニラストの有効性が証明されています。



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